音楽リビングのある住まい

LDKと接する半階下がった音楽室を中心に
生活と音楽が身近な住まいです


画像をクリックすると拡大します

設計概要

《音楽リビングのある住まい》
奥様のご実家に隣接する土地に計画されたこの住まいでは、音楽を演奏し録音する室と書を行う室が求められました。
ご主人はギターを本格的に演奏され、その演奏を録音・加工されたり多重録音されたりしています。3人のお嬢様は日々ピアノのレッスンを怠ることがありません。音楽室には、近隣や他の室への音漏れを防ぐこととともに、録音のためには外部からの騒音や振動を遮断する高い防音性が求められました。
しかしながら、音楽がこのご家族の生活の大切な一部となって日々ごく親しくあるように、音楽室もまた防音を重視するあまりに密室化していくのではなく、生活の場として家族に身近にあることが望ましいと思われます。
「音楽室は家族が集うリビングでもありたい」という建築主のお考えに沿い、音楽室は敷地の中央にご実家側に寄せて配置しました。周囲・上部を他の諸室で囲み、近隣への音のバリヤーを設けます。南側に接する食堂とはその間をペアガラスのノンレールサッシュで区切り、遮音を得つつ視線の行き来による一体感を生みだすようにしています。建物全体の床の高さは水害に備えて高めに設定してあり、音楽室の床のみ通常の高さに下げることで、気積を確保すると共に、食堂からの程よい距離感をつくり出しています。

一方、奥様が日々の職と家事から離れ、精神の集中を妨げぬ静かな落ち着いた環境の中で厳しく書に立ち向かう場として、書道室は日常の生活から最も距離をおいた2階の端に設けました。書き上げた書を磁石で留めて吟味できるよう壁の一部を鋼板貼りとし、また、天井高さも3mとして大きな作品は天井から吊り下げる仕掛けを設けています。

お住まいが完成して新しい家具も入った春の一日、垣根を取り払ってご実家と一体となった庭からは木蓮の花が食卓の窓辺を飾り、3人のお嬢様が奏でるピアノの音色が建物に新生の息吹を吹き込んでいるかのようでした。       

建築概要
          
  • 敷地面積:198.34㎡
  • 建築面積:78.54㎡
  • 延床面積:123.04㎡
  • 規模構造:木造 2階建て
  • 設計期間:2006/12~2007/09
  • 工事期間:2007/10~2008/03
  • 設計監理:木村哲矢建築計画事務所
  • 施  工:株式会社 岩田組
  • 撮  影:平井美行写真事務所