《人を優しく包み込む》
それまでお住まいを子世帯に譲り、同じ敷地内にお二人だけのつつましいお住まいが設けられました。小さく素朴な住まいは、人を優しく包む心地よい衣服のように考えられ、身体にフィットしつつも身体を束縛することなく伸びやかに、そして自然とともに呼吸をする住まいです。
既存の画室に増築されたこの住まいは、約6.4m x 約5.5mの長方形を4つに分割し、それぞれに居間・食堂・台所・寝室の機能を配したシンプルな平面を持っています。小屋組みを現しにした天井が全体を覆ってこれら4つの空間を統合しつつ、南北に丸太の、東西に角材の梁を現しにして掛け渡すことによって、ゆるやかに4つに分節しています。その丸太梁と角梁の交差部を磨き丸太の心柱で支え、言わばこの住まいの床柱としました。
手のひらで優しく包むような食堂、狭くとも拡がりを感じる居間、その南側には全面開け放ち額縁のような窓の外に、庇に覆われた心地よいウッドデッキが設けられています。
庭の青々と生い茂る樹々と、自然素材を用いて仕上げられた内部の空間とがやさしく対話をするような住まいは、京都桂のこの地が導いてくれたように感じます。