《一人の時間を過ごす》
日常の生活から離れて一人静かに自分の時間を持ちたい、必要最低限の広さと心休まる飾り気のない素朴な空間に身を委ねて過ごしたい、そのような要望から高野山への道筋に沿い、周囲を山並みにつつまれたこの敷地にこの小さな住まいは計画されました。
南東側の山並みを望むようにウッドデッキに沿って三つの室が並べられます。主たる食堂と、お茶のお稽古にも使用される和室とは、全て開放される障子で柔軟に仕切られます。デスクとベッドが置かれる洋室は身体に沿うよう小さく区切られ落ち着きをもたらしますと共に、上部の天井では食堂と一体的につながり、閉塞感を無くしています。
切妻の素朴な外観には、駐車スペースの下屋が陰影を作り出しています。格子戸をくぐり豆砂利洗出しの玄関土間で身体の向きを変え舞良戸に手を掛ける、その動作の流れの中で日常と離れ新たな世界に移行する、そんな想いを込めてこの小さなアプローチを設けました。